姫路/桃色吐息/東原畜産 東原聖雲さん

 姫路初のブランドポーク「桃色吐息」は、甘みと品があり口にするとさらりとした脂が溶け出します。セトレハイランドヴィラ姫路でもお客様から好評をいただいており、思わず笑顔になる絶品の品です。このブランドポークの品質を保つため、豚の飼育環境や飼料などに徹底してこだわる東原畜産を訪れました。

輸入豚が増える昨今
国産の豚に興味を持ってもらうことが使命

姫路駅から車で約5分。川沿いにある東原畜産に到着すると、あちこちから豚の鳴き声が聞こえてきます。2階建の養豚場の窓から覗き込むと、ピンク色の丸々した豚たちが気づいて、一斉に小さな瞳をこちらを向けてきます。そして、我先に近づこうとする可愛らしい姿。

ここは、姫路初ブランドポーク「桃色吐息」の豚を飼育する東原畜産の養豚場。淡路島の農場で三種の品種をかけあわせた三元豚を繁殖させて、月齢100日ほど経った子豚たちがここ姫路の養豚場に運ばれてきます。

「一般的な養豚の飼育方法とは異なり、ここで育つ豚のうち選抜されたごく僅かな豚のみが桃色吐息に選ばれます」

兵庫県は、但馬牛や丹波鶏をはじめ牛や鶏のブランド肉は有名な一方、豚の生産農家が少ない中、姫路発のブランド豚を生み出し邁進してきたのが東原畜産代表の東原聖雲さんです。

「豚は、工業製品作って数作って売るものではなく生き物ですから。安心安全のためにも、一頭一頭手間暇かけて育てています。輸入肉が大量に入ってきているなかで、国産の豚に興味を持ってもらうとことが我々の使命。国内ポークでこれだけ頑張ってるんやで」と。

一般的な豚の規格は、180〜200日ほど育成して120kgほどの大きさになると出荷されます。桃色吐息の場合は、さらに一ヶ月あまりに育てて230〜250日かけて最大限大きく育てます。成長にあわせて個体差の激しい豚を東原さんが細かく選別した後、桃色吐息となる豚ができ出荷されます。その数は、たった1割にしか満たない大変厳しいものです。

「桃色吐息は何よりも脂身が上品なんです。お客さまに食べてもらい、喜んでもらう声が聞こえたときが一番嬉しいね。実際に食べてもらって喜ばれることが第一ですわ」

豚を飼育する環境への徹底したこだわり

安心安全で美味しい豚を届けるため、東原畜産では豚の飼育環境や育て方などさまざまな工夫をしています。例えば、飼育スペースは成長段階に合わせて調整しており、ストレスなく動き回れるようにして、ストレスなく動き回れるようにしています。また、市販の豚の飼料はトウモロコシが7割の中、東原畜産では大麦やトウモロコシ、パスタを中心に、人が食べる菓子類も飼料にしてブレンドするこだわりようです。

「豚の嗜好性にあわせて、兵庫の有名菓子店の余剰分のお菓子も豚たちは食べているんですわ」

成長段階によって飼料の種類を変え、与えるのは朝の時間帯のみ。無駄に飼料を与えないことで、競争力を高めると同時に豚たちの生活リズムを整えています。

さらに驚かされたのは、飼育場の清掃環境。スタッフが直接豚の豚房に入って1日に4〜5回も飼育スペースを水洗いしています。

「中に入った途端、豚たちが近寄ってきますよ。ホースも噛むし、グリグリと甘えてくるんです。ちょっとは警戒心を持ってほしいと思うくらいですよ」

と話すスタッフの中山さんの豚への接し方から愛情が伝わってきます。普段から豚と人間が触れ合う機会が多く、一般の養豚場に比べて豚の警戒心がないそうです。夏の暑さ、冬の寒さと飼育環境も厳しいなか、安心安全のため、近隣への目配り気配りのためにも清掃を徹底。以前は、豚の臭いが減るような飼料も試したけれど、結局清掃に勝るものはないと東原さんは言います。

養豚の生産者からは『そんなことまでして採算が合うんか』と言われる。合うか合わへんかはなしに、一つの技術を持って豚を育てるのが私のポリシー。プライドをかけた桃色吐息は、一度食べていただけたら納得してもらえる豚肉です」

これらのこだわりを徹底して育て続けてきた桃色吐息は、西日本豚枝肉コンクールで3年連続優秀賞を受賞しており、業界からも評価されています。

言葉にしたことは有言実行。
昔から譲らない己のポリシー

 家業の畜産業を受け継いだ東原さんですが、もともとは銀行員として働いていました。

「30歳になるまで10年ほど銀行員でした。この仕事に就く前に、外に出てこいと親父から言われてましたが、銀行員で飯を食べるつもりだでしたよ。それが帰ってこいと」

威勢の良い姿からは、元銀行員であったことが想像できないでいると「銀行でも暴れん坊将軍でしたわ」と東原さんは豪快に笑います。

「自分がやりたいと思ったことを口に出して有言実行する。自分でプレッシャー与えながらやると後戻りできひんやん。男が1回口に出したことだから。あいつ言うことがちょろちょろ変わるでとなると、信用なくすねん」

自分で自分を追い詰める。人の真似事は好きじゃない。そう言い切ります。豚を飼うことは周りもするけれど、「やっぱり東原のすること、言うことはちゃうな」と言われる生き様を現在大学4回生の息子にも見せたい。

「私も父の背中を見て使命感が湧いてきた。息子にも自分の姿をみて、やらなあかん使命感と、やってみたいと言う気持ちが彼の中で生まれなければこの仕事はできないですから。選択肢はお前にあると言っています。無理やりせいと言ってできるような仕事じゃないですから」

生きものと向き合う厳しい養豚業の世界。常に挑戦者として前進してきたからこそ、苦労も喜びも味わい尽くしてきた。だからこそ、東原さんはいつか息子にも自分の意思でこの仕事に就いてほしいと期待を込めます。

産地ブランドへの次なる挑戦

桃色吐息は、姫路のブランドポークとして主に姫路市内外のレストランで扱われています。ただ、イベントなどで一般のお客様に提供して喜んでもらったときに「どこで買えるの?」と聞かれても直接購入できる販売店数が少ないため案内ができないというジレンマを抱えてきました。今後も桃色吐息のブランドを育て続けていくなかで、同時に新たな挑戦も始めています。

それは、兵庫県産ブランドポーク「月のあかり」を飼育し、量販店へ販売をしていく取り組みです。輸入肉の割合が増えて日本相場も厳しい状況が続いていること、産地ブランドが注目されていることに着目し、もっと一般のお客様が手に取りやすいポーク作りにも挑戦しています。

「桃色吐息はこれからも重要なブランドポークです。こだわるからこそ全ての豚を桃色吐息に育てるのは難しいのが実情。今後もよりより一層地元に根付いて地元に愛される豚の育成にさらに力を注いでいこうと思っています」

生まれ育った姫路は、都会でもないし田舎でもない。言葉がきついけど情がある町と語る東原さん。「姫路の農家さんたちと一緒に、地元の野菜と桃色吐息をかけあわせた鍋を作っていきたい」と話す姿からは、厳しくも愛情のある人柄が垣間見れます。

これからも、地元に愛され喜ばれるこだわりの豚を育てていきます。