セトレならまち VOTE ACTION①
共感企業 株式会社ANDNEXT

私たちSETREグループは、VOTE ACTIONと題して、未来課題解決の為に各店舗3つのアクションを掲げています。
環境問題・食糧問題・地域課題などをテーマに現状の課題を提起し、多くの企業様と一緒に共感の輪を広げ社会全体で取り組むことを目指しています。

背景

世界最古のオーケストラと言われる日本の「雅楽」ですが、演奏を披露する機会の減少や、雅楽奏者不足、収益化が難しいといった要因から鑑賞できる場が少なくなっています。
このままでは、雅楽奏者の育成も難しくなり雅楽という日本文化が衰退してしまいます。
そんな歴史・文化的価値を伝承するため、セトレならまちでは雅楽の歴史や課題を発信し、ワークショップを定期開催しています。
また、半年に一度ホテルのある開けた土地を活かし地域や観光客の皆様へ向けた演奏会を開催しています。

そんな背景の元、セトレならまちにて雅楽体験をしてくださっているのはANDNEXTさん。
「Irodori Gagaku Project」という、各種文化イベントやレストラン・カフェなどでのひとときに雅楽で華を添える出張演奏のプロジェクト等を通して、雅楽を「観て・聴いて・体験する」機会や、他では味わえない大和ならではの体験を提供されています。
今回お話を伺った講師の山口 創一郎さんは、雅楽団体「うたまいのつかさ」の奏者としても活動されており、演奏以外にも、関西を中心に演奏・講師活動に従事されています。

最も規範となる音楽、雅楽

そもそも皆様は「雅楽」をご存じでしょうか。

その国の宮廷音楽が雅楽と呼ばれ、日本においては明治以降のものを指します。
江戸時代の鎖国が終わり、明治時代以降に海外から音楽やオーケストラ楽器等が多数流入される中で、国の基準となる音楽を作る必要があるとされ、日本の雅楽が制定されました。

日本の雅楽の伝来は3つあるとされ、1つ目は、日本古来から伝わる神楽。
天照大神が弟神に怒り天岩戸に隠れ、光がなくなってしまった際に、天照大神を元気づけようと神様たちが祭りをし、女性の神様が舞を舞ったことから始まったのだとか。
この舞は、雅楽のみならずアイドルや芸能の起源ともなっています。

2つ目は、中国や朝鮮半島、ベトナムなどの大陸から入ってきたもの。
飛鳥時代に仏教が伝来した際、仏教音楽として大陸で使っていた楽器や舞、歌も輸入されました。

そして3つ目は、奈良時代・平安時代の“うたいもの”と呼ばれる歌。
その多くはラブソングだったそうで、女性が自由に恋を表現できない時代の中で、ゆっくりと自分の気持ちを歌う事で気を紛らわせていたのだとか。

たくさんの楽器や舞が奈良・平安時代に融合していく中、楽聖改革で残されたものがこの3つなのだそう。(諸説あり)
そんな雅楽は1955年、宮内庁式部職楽部の楽師が演奏するものが国の重要無形文化財に指定され、2007年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

世界を表す3つの楽器

日本の雅楽において、管楽器として現在使われるのは鳳笙(ほうしょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)の3つ。

鳳笙


神秘的な和音を奏でる17本の竹が特徴的な鳳笙はパイプオルガンやアコーディオンの起源ともなっており、6つほどの穴を押さえることで和音を奏で、伴奏やハーモニーを担当します。
竹の長さではなく、1本1本の竹の根本にある金属のリードに付いた蜜蝋と重りの量で音が変わり、吸っても吐いても同じ音の鳴る不思議な楽器。
非常に水分に弱いため、電熱器で水分を蒸発させなければいけないデリケートな楽器で、昔は炭火が用いられていたのだとか。
また、雅楽は“世界を表す”とも言われ、天から差し込む日の光のような音と鳳凰が羽を休めたような形をモチーフに作られた鳳笙は“天の世界”を表現しています。

篳篥


その小ささからは想像もできないようなダイナミックな音が特徴の篳篥は、竹製の菅をヨシやアシでできたダブルリードで演奏し、主旋律を担当します。
リコーダーのように決まった穴を押さえると決まった音が鳴るわけではなく、リードと口の角度で音程を調整するという、音感も必要となってくる楽器。
鳳笙が天の世界を表現しているのに対し、篳篥は“地上にいる人の声”を表すとされます。

龍笛


高い音も低い音も鳴らせる龍笛は、鳳笙やオクターブしか出せない篳篥の足りない部分を装飾するような役割を持ちます。
鳳笙が天の世界、篳篥が地上にいる人の声を表し、龍笛が表現するのは“龍のうなる声”。
雅楽は基本的に天と地を繋ぐ意味合いを持つ龍笛から始まります。

なかなか触れる機会もないこちらの3つの楽器ですが、セトレならまちの雅楽体験では全て実際に演奏することも可能です。
音を鳴らすだけなら簡単な楽器もあれば、コツを掴むのが難しい楽器も。
自分で演奏してみることで面白さを体験し、雅楽を少しでも身近な存在に感じていただければと思います。

雅楽体験に込める想い

時間が経つのがあっという間に感じるような軽快なトークと丁寧なご指導で雅楽体験を進めてくださった山口さんに、活動に対する想いを伺いました。

セトレならまちでの活動に関しては、まずは雅楽の認知を広めていくことが1番の目的だと語ってくださった山口さん。
西洋音楽が基本教育となっている現代では、日本音楽を知る機会が少なく馴染みもないため、“しんどい”“眠たい”という印象を抱いてしまう人が多いのだとか。
面白さを教える人が少ない現状の中で、「なんだ、雅楽ってやってみたら面白いんだ!」と感じてもらいたいという熱い想いを持つ山口さんは、講師をされる際も相手のバックグラウンドから“何を面白いと感じる人なのか”を探り、現代の流行なども織り交ぜながらトークで惹きつけ、雅楽を身近に感じさせてくださいます。

雅楽の良さは、拍子や音程の“曖昧さ”にあるのだそう。
西洋思考や論理、常識に縛られている現代の教育とは違い、明治時代までは物事に対してももっと“曖昧さ”があったのだとか。
その“曖昧さ”を大切にしてこそ、その人に合った力が身につくと考える山口さん。
指揮者がおらず、各楽器の奏者への心遣いや気遣いで演奏を合わせていく雅楽を通して、自分の色をしっかりと出しながらも協調していく人間性・人格といった人となりも学ぶことができると感じられています。

古くから守られてきた「雅楽」。
その面白さに触れるだけではなく、昔の日本人が大切にしていた価値観すらも感じられる、そんな有意義で特別なお時間。
セトレならまちにお越しの際はぜひ体験していただき、皆様の世界をまた1つ広げていただければ幸いです。(詳細はこちら