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2021/01/20

奥深い墨の世界。高品質な墨が奈良でつくられてきた理由と大人がハマる自分だけの墨作り体験をご紹介します。

奈良というと、大仏や鹿をイメージする人が多いはず。実は奈良の魅力やアピールポイントはそれだけにあらず。「墨」の9割以上が、奈良でつくられているのはご存じでしょうか?奈良は古都として栄えてきた歴史から、知られざる伝統的な産業もたくさんある土地です。

今回は、そんな奈良でつくられる墨についてフューチャーしていきます。なぜ奈良で墨がつくられてきたのか、そして「奈良墨」と呼ばれる、奈良で生産される墨の持つ特徴をご紹介。また、奈良旅の際にはぜひ体験したい自分だけの墨づくり体験まで。大人の教養として知っていると自慢できる「奈良と墨の関係」についてお伝えします。

全国の墨のシェア9割以上が奈良。なぜ質の高い墨は昔から奈良でつくられてきたのか。

「墨」というと書道。小学校や中学校で、習字の授業として墨を使ったことがある人も多いはず。今では大人の習い事として、日常から離れ心を落ち着けたい人からも密かに人気を集めています。マインドフルネスや禅の考えが広がってきた昨今では、ますます注目を集めているとも言えそうですね。

そんな書道と切っても切り離せない墨。全国においての墨の生産の90%以上がこの奈良の地が担っています。この墨と奈良の結びつきは昔から強く、現在においても奈良の伝統産業のうちの一つで、2018年には経済産業省から伝統工芸品としての指定を受けています。では、どうしてこんなにも奈良と墨の結びつきが強いのか、その歴史を紐解いていきましょう。

奈良と墨の深い関係、現代まで連綿と続くその歴史とは

奈良墨の歴史は非常に古く、遡ること約1200年。大同元年(806年)に遣唐使として唐に渡った空海が、筆とともに墨の製法を持ち帰ったことが起源と言われています。そしてその後、興福寺二諦坊で製造が始まったとされています。当時奈良では仏教信仰が厚く、写経に墨が多く用いられました。そのため国内での墨の需要が高く、唐からの輸入だけでは追いつかなかったようです。

その後、豊臣秀吉が世を制する戦国時代。奈良の墨がさらに全国的に有名に、そして転機を迎えます。それまでは、寺社の指示により墨職人が墨をつくり、寺社に納めるというスタイルでしたが、武士が台頭してきたことにより、寺社の弱体化が見られるようになりました。さらに、秀吉の「商い」をすすめていく政策により、墨職人が「墨屋」として商いを始めるように。

しかもこの時代には、日明貿易により煤の原料となる菜種油が手に入りやすくなったことから、より大量の墨がつくれるようになったという経緯があります。

しかし、現在奈良の墨職人はなんと10人ほどとなっているよう。こんな少人数で全国シェアの9割を担っているとはそれも驚きです。この伝統が令和になっても絶えることがないよう願うほかありません。

1200年の歴史。天平時代から製法が紡がれる「奈良墨」の特徴とは

そんな奈良墨の特徴をご紹介する前に、そもそも墨は何から出来ているか知っている人は案外少ないのでは。墨は煤(すす)と膠(にかわ)と香料、水を練り乾燥させたもの。実はこんなシンプルな原料で出来ていたとは驚きです。

ちなみにこの煤(すす)、松由来のものを「松煙墨」、菜種油やごま油など油を燃やしてつくるものは「油煙墨」と呼ばれています。現在市場に出回っている固形墨の多くは、この「油煙墨」の方。

そして膠とは、簡単に言うと動物由来のゼラチンです。その匂いを消すため、香料が用いられています。

漆黒の中に深みのあるつや。呼吸を整えて、墨を磨る時間も楽しみたい

奈良墨の最大の特徴は、その墨色の美しさ。通常、墨というとただ真っ黒であることを想像してしまいますが、奈良墨は違います。墨色に深みとつやがあるのが特徴で、筆を運んだ時の墨色の濃淡、かすれ、滲みで表現がぐっと深まります。

これは、奈良墨に不純混合物がほとんどなく、粒子が細かく均一だからこそ。これは墨を磨る段階でもきっと感じてもらえるはず。磨り心地は滑らかで心地よく、硯で磨った墨の面を見てみると、つやっと照りが見える。これこそが奈良墨の質の高さを表していると言えるでしょう。

このような特徴がある奈良墨の製造は、何と全て手作業!繊細な職人技が必要とされる作業ばかりで、昔からの製造方法が連綿と受け継がれている貴重なものなのです。だからこその滑らかな磨り心地、墨の香り、美しいつやのある墨色。背筋を伸ばして深呼吸し、ゆっくりと墨を磨る時間すら楽しみたいものです。

生の墨を手で握ってつくる『にぎり墨体験』。奈良でしかできない体験は「錦光園」で。

そんな1200年以上の歴史がある奈良墨。そんな奈良墨に興味がある人にぜひおすすめしたいのがこちら。「錦光園」で体験する「にぎり墨体験」。自分で生の墨を握ってつくる体験が出来るというもので、まさに奈良旅だからこその経験です。

この錦光園は、昔ながらの製法を守り、手作りの奈良墨を100年以上に渡ってつくり続けているお店です。工房内では、奈良墨の製造はもちろんですが墨の販売もしています。ワンランク上の墨を使ってみたい!これから書道を始めてみたい!伝統工芸品としての墨に興味がある!という人はぜひ一度暖簾をくぐってみてくださいね。

そんな錦光園はJR奈良駅から3分、奈良の主要観光地である「ならまち」からも徒歩8分の場所に位置しています。アクセスもいいので、奈良観光の途中に組み込みやすいのも嬉しいですね。

にぎり墨体験は予約制となっています。前日の21時までに、電話、FAX、専用のメールフォームから申し込んで下さい。所要時間は約40~60分程。もちろんおひとり様からでも体験できます。

料金は1丁(個)1500円(税別)で、桐箱代込みです。ちなみにオプションで各500円(税別)で、自分でつくったにぎり墨に金箔を貼ったり、習字体験もあるので、さらにオリジナルの墨をつくりたい!という人や、海外の友人に日本らしい体験を紹介したい!という場合にはこちらもおすすめ。

世界で1つだけ!あなただけの墨づくり。墨の香りに包まれた癒しの時間で心を整える

では、気になるのがにぎり墨体験の内容。まずは奈良墨の歴史や、現在の奈良墨と墨屋さんの現状について教えていただけます。そしてここから実際に、墨職人による生墨の型入れ作業を目の前で見せてもらえますよ。奈良の伝統工芸をこんな間近で見ることができる機会はそうないものです。

そしていよいよ、生墨に触れる時が。生の墨に触れた瞬間の温かさ、やわらかさはまさに体験した者にしか分からない感覚。墨の香りに包まれて、生墨の温度、質感をじっくり感じてみてくださいね。出来立ての墨はねじってもちぎれないほど弾力があり、不思議な感触なのだそう。ちなみに、手はほとんど汚れないのでご安心を。

そして自分の握り跡、指紋がついた自分だけの墨は桐箱に入れて持ち帰ります。この桐箱は直射日光の当たらない冷暗所で、3カ月保存してくださいね。その間、決して開けないように!3カ月かけてしっかりと乾燥させることによって、世界で1つだけのあなただけの墨の完成です!

もちろんしっかりと乾かしたにぎり墨は、実際に硯で磨って使用することが可能。自分でつくった、世界で一つだけの奈良墨の磨り心地を試してみてはいかが。滑らかな磨り心地と、墨の香りにきっと癒されるはずです。

住所:奈良県奈良市三条町547
電話番号:0742-22-3319
アクセス:JR奈良駅より徒歩3分
     近鉄奈良駅より徒歩10分
料  金:にぎり墨体験:1丁 1500円(税別)
     オプションで金箔貼付け、お習字体験あり(各500円)
ホームページ:錦光園公式HP

セトレならまち
SETRE NARAMACHI
住所:奈良県奈良市高畑町1118
TEL:0742-23-2226
営業時間:
【ホテル】 火曜定休
http://www.hotelsetre.com/naramachi
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